May 2024 思いやり
他人からしてほしいと思うことを、あなたたちも他人にしてあげなさい。
(マタイによる福音書7:12)
チンパンジーは人間に一番近く、人間にできることがかなりできるそうです。では、人間だけにできること、それは、今ここにないことを思い浮かべること「想像力」だそうです。
ある神父様のお話を思い出します。小学生の時、入院し同室だった二人の青年と親しくなりました。そのうち、病室が変わり、夕方、お母さまとアニメを見ていたときに、青年がやって来て、もう一人の青年が亡くなったというのです。自分は驚き泣きそうになったのを隠すため思わず「今、テレビを見ているから静かにして」と青年の言葉に耳を傾けなかったのです。自分を子ども扱いせず、一人の人間として、友として関わってくれていた彼の思いに応えることができなかったことに今でも後悔の念が残っているとのことでした。
皆さんは、このお話を聞いて、どのような感想をお持ちになったでしょうか。
わたしは、そんな幼かった神父様の体験が何か自分事のように思え、少し胸が苦しくなります。もしかすると、ある程度、成長すれば、人は他者にどのようにふるまうべきか分かっているのかもしれません。にもかかわらず、そうできなかったことに後悔せざるを得ないのかもしれません。
退院のとき、そんな自分の態度を謝ったところ、青年はわかっていたのか、笑顔で見送ってくれたそうです。自分を振り返ってみると、意図的ではないけれど、甘えや未熟さから家族や友人など相手を思いやれなかったこと、また、相手のそのような態度を痛い思いをしながら受け止めたことも、そういえばあったことを想います。人は、幼い神父様の立場も青年の立場も経験しているからこそ、共感できるのかもしれません。そして、赦され赦しながら人間として成熟していくのでしょう。
「わたしは、あなたがたを友と呼ぶ。父から聞いたことをすべてあなたがたに知らせたからである。……互いに愛し合いなさい。」(ヨハネ福音書15章15~16節)